

※一応クロスオーバーになるのでご注意ください
※かなりギャグなので苦手な方はブラウザバック推奨です(内容的に全然重要じゃないので読まなくても別に大丈夫です)
※ヒロインは各々独立してる設定です
(早和くんのヒロインのみ登場、セリフあり)
──ふたりが目を開くとそこは、謎の空間だった。
夜の底が黒くなった。見知らぬ”誰か”との邂逅に足が止まった。
早和くん「……」
祐嗣「……」
──スタスタスタ
早和くん「…?」
祐嗣「……」
早和くん「……」
──スタスタスタ
早和くん「……」
祐嗣「…あの」
早和くん「あ、ハイ」
祐嗣「もしかして、迷ってます?」
早和くん「…あ、そう、なんですよね。ずっとここ、歩いてて…」
祐嗣「俺たち、ずっと会ってますよね?」
早和くん「…はい。たぶん…10回くらい」
祐嗣「…体感なんですけど、もう5時間ぐらいはここにいる気がするんですが」
早和くん「……」
祐嗣「……」
──スタスタスタ!!
早和くん「──でで、ですよね!? や、やばくないすか!?」
祐嗣「ヤバイよなんだよここ!! 全然出れないよな!?」
早和くん「そそそそうなんですよ! すみません…。俺、なんか変な恰好だなって、幽霊かなって思っちゃって…! ずっと声かけれなくて…」
祐嗣「いや、まあ、幽霊ではある」
早和くん「…え?」
祐嗣「…え?」
祐嗣「…とりあえず、地図書くか」
早和くん「ハ、ハイ…」

(その場に座るふたり)
祐嗣「…もっとこっち、ランプ寄せてくれ」
早和くん「…こうすか?」
祐嗣「ん」
早和くん「…そういえば、これ(ランプ)って元々ありました?」
祐嗣「なんとか歩いて見つけた。周りになにもなかったしな」
早和くん「俺は元々、懐中電灯持ってきてたんで…あれだったんですけど」
祐嗣「……」
早和くん「ここ…どこなんでしょうね」
祐嗣「心当たりは」
早和くん「…いや、一応。ちょっと肝試しっていうか、度胸試し、的な…。いわくつきの山に入って、気づいたら「ここ」にいた感じで」
祐嗣「…なるほどね」
「完成」と、祐嗣が地面?に地図を書き終える。
早和くん「おお、書けるんすね」
祐嗣「地面自体は膜が張ってる感じだ。皮膚をガリガリ傷つけてるイメージ」
早和くん「…えー。なんかそれ、あれじゃないすか? 巨人の体内にいる、みたいな…」
祐嗣「…ここが?」
早和くん「…現実だったら、ありえないですけど」
祐嗣「…現実じゃないかもしれない。もしかしたら夢かもな」
早和くん「はは。それだったらいいですけどねー…」
祐嗣「…じゃあ振り返る。まず、各々目を覚ました場所は違う。で、ずっと真っ直ぐ歩いてきた」
早和くん「あってます」
祐嗣「持ち物はランプ(懐中電灯)のみ。辺りは真っ暗。地面はちょっとぬるぬるしてて粘膜っぽい」
早和くん「…はい」
祐嗣「…そして、ずっと繰り返し同じルートを辿ってる」
早和くん「…無限ってことだ。無限城すね」
祐嗣「…なに?」
早和くん「キメツの映画ですよ。見ました?」
祐嗣「…見てねー」
早和くん「見た方がいいっすよ! スゲーおススメです!」
祐嗣「…お前、腹は?」
早和くん「腹? ああ…全然減ってないです。喉も…うん」
祐嗣「…じゃあマジで無限ループだな。出られるまで」
早和くん「ええ…。うそーーん…」
祐嗣「あ、スマホは? 持ってんだろ」
早和くん「…あ、あるにはあるんですけど…。その、圏外で」
祐嗣「ダメか…」
早和くん「…もし夢だったら、もうじき覚めますかね?」
祐嗣「…ためしに一回、寝てみるか」
早和くん「…っすね」
(とりあえず横になってみるふたり)
祐嗣「うわ…背中の感触ヤバイな」
早和くん「…がんばりましょ」
祐嗣「……」
早和くん「……」
──目を閉じる。
辺りは静かで、物置ひとつしない。それが逆に、彼らの神経を研ぎ澄ます。
…寝られない。
祐嗣「…これ、部活思い出すわ。合宿の時の」
早和くん「…あー。夜、雑魚寝しますよね」
祐嗣「寝相といびきヤバイやついてな」
早和くん「布団もどっかいくし(笑)」
祐嗣「…なんだかんだ、あれも思い出だよな」
早和くん「マジすか(笑) 俺はもうしたくないすけど(笑)」
祐嗣「…俺は、したいな」
早和くん「……」
祐嗣「…もうできないし」
早和くん「(…なんか、この人。いや…)」
早和くん「…あ! 戻ったらなにします? 俺はライブかなー。明日あるんすよ。だから一刻も早く帰りたいです」
祐嗣「…ライブ…?」
早和くん「好きなアイドルいて~めっちゃかわいいんです! 写真! あ、今ムリだった…」
祐嗣「…お前」
早和くん「はい?」
祐嗣「…別に俺、死なないからな。寝るだけだからな」
早和くん「…いや、だってなんか、顔色めちゃ悪いし」
祐嗣「……」
早和くん「……」
祐嗣「……俺は、妹がいるから。すぐに戻らないと」
早和くん「へー…。いいっすね。俺は兄貴なんで、妹とかうらやましーなー」
祐嗣「…なに言ってんだお前。かわいいだけだぞ」
早和くん「いやめっちゃいいじゃないすか」
祐嗣「……」
早和くん「一緒に住んでるんすか?」
祐嗣「…まぁ、うん」
早和くん「いーなー…」
祐嗣「…ねずこってさ」
早和くん「…え?」
祐嗣「最後、人間に戻れたんだっけ」
早和くん「……」
祐嗣「……」
早和くん「…それは」
祐嗣「……」
早和くん「……」
祐嗣「…ZZZZ」
早和くん「──寝ちゃった!? はやッ」

~~数時間後~~
──むくり。
祐嗣「……」
早和くん「……」
祐嗣「…おはよう」
早和くん「…はようございます」
祐嗣「…なーんも変わってねえよ。ずっと同じだよ。真っ暗闇だよ」
早和くん「…マジで出れないんすかね。ヤバイ、泣きそう」
祐嗣「俺はともかく、お前はヤバイよな…」
早和くん「どうしよどうしよどうしよ…!! 俺死んじゃうんすか!?」
祐嗣「…多分」
早和くん「イヤだーーッッ!! 死にたくないよー!!」
祐嗣「落ち着けって!! まだそうと決まったわけじゃない」
早和くん「でも、え!? どうするんですか!? やっぱりこれ夢じゃないですよ!! 現実ですよ!!」
祐嗣「…いや、まだ、なにか」
──祐嗣は考える。
こんなの絶対におかしい。自分はまだわからなくもないが、”普通の人間”がこんな場所にいるのは妙だ。
だから抜け出す手段はまだある。
これがもしも、”ゲーム”なら…。
祐嗣「…なにか、条件があるはず」
早和くん「…ええ?」
祐嗣「…どんな場面でも、クリアするには何かしら条件があるだろ。ここだってマジに無限ループじゃないはずだ」
早和くん「…出られる条件…! 出口の発動条件!!」
祐嗣「そう、それだ!」
──コンッ
祐嗣「……」
早和くん「……」
祐嗣「…え、なに?」
早和くん「…いや、これしかないかなって」
祐嗣「…これしかないって。俺の頭に手刀が?」
早和くん「…はい」
祐嗣「……」
──ゴンッ
早和くん「…え、痛」
祐嗣「……」
早和くん「……」
──ゴンコンゴンコンッ
早和くん「ちょっとやめてくださいよ!! 頭が!! 割れる!!」
祐嗣「お前が先にやってきたんだろうが!! お前こそヤメロ!!」
早和くん「ここまできたらやめられない!! これが発動条件かもしれないからッ!!」
祐嗣「ンなわけねーだろ!!」
早和くん「うおおおおおおッッ」
?「やめときやめとき。ほんまに頭割れるで~」
──ピタリ。
ふたり「「…え?」」
あいまさま(声)「こんにちは~。あいまさまで~す。声だけの出番で堪忍な~」
ふたり「「うわあああああああああ」」
早和くん「人!? 人の声!?」
祐嗣「どっから聞こえてんのこれ!?」
あいまさま(声)「え~(笑) 怖がりすぎちゃう?(笑) てゆーか、君らが僕の中に勝手に入ってきたんやん」
早和くん「…僕の、中?」
祐嗣「勝手に…?」
あいまさま(声)「そうやで。自覚なしい?」
早和くん「…じ、自覚っていうか」
祐嗣「…気づいたらここにいたから」
──どこからともなく聞こえてくる声。
その声の主は、戸惑う二人をあざ笑うようにケタケタと笑う。
あいまさま(声)「なるほどな~。そっかそっか~」
早和くん「…あ、あの」
あいまさま(声)「ん~? 質問?」
早和くん「…はい、質問です。俺たちって、ここから出られるんですか?」
あいまさま(声)「うん。でれるよー」
ふたり「「…!!」」
あいまさま(声)「あ、でも。いま僕、ちょうどお腹すいてたし…どっちか残ってもらおかな?」
ふたり「「……え??」」
あいまさま(声)「ここはなあ、いうなれば食道。やから全然後戻りできるけど、勝手に入ってきた罰もかねて、ひとりだけいただきたいとおもいま~す♡」

──お、終わった。
ふたりは青ざめた顔で空を見上げる。たぶん、そのあたりから声がするから。
一応、なんとなく。
早和くん「…た、たべるんですか」
あいまさま(声)「うん」
祐嗣「…な、なぜ」
あいまさま(声)「だって僕、そういうモンやから」
あいまさま(声)「君らもごはん、たべるやろ? それと同じ。まあ正直、腹の足しにもならんつまみ食いやけど」
あいまさま(声)「僕、メインディッシュはそばにおるんよ。けど、たまにはちょっと軽いもん食べたいやん。10円ぐらいのガムとか」
早和くん「…俺らって10円のガムなんですか?」
祐嗣「…ヤングドーナツは」
あいまさま(声)「それは言い過ぎやろ(笑)」
早和くん「…そんな」
あいまさま(声)「君らがさっき話してた、じょーけん?てやつがこれ。どっちかひとりが僕にたべられたら、もうひとりは元の世界に戻れる」
ふたり「「………」」
あいまさま(声)「な? 簡単なハナシやろ?」
──その言葉に、ふたりは顔を見合わせる。
(…ゴクリ)
祐嗣「……」
早和くん「……」
祐嗣「…いけるか?」
早和くん「ムリですよ!! なんで俺なんですか!!」
祐嗣「だって俺には妹がいるし」
早和くん「そんな当たり前みたいに言われても…! 俺だって待ってくれてる家族とか、友だち…は、あれだけど、あの、彼女とかいるんですから!!」
あいまさま(声)「へー。君、カノジョおるんや。意外」
祐嗣「マジ…?」
早和くん「…どういうイメージ? ねえ俺ってどういう風にみられてるんですか?」
祐嗣「証拠みせろよ」
早和くん「…いやそんなこと言われても。って、あ…!」
「じゃじゃーん!」と早和くんはスマートフォンの裏を祐嗣とあいまさま(声)に見せつける。
早和くん「──彼女(のトレカ)です!!」
祐嗣「うお…」
あいまさま(声)「あー……(笑)」
早和くん「……いや、ちょ、あれ?」
祐嗣「…まぁ、あんま気にすんなよ。俺は全然、いいと思うし、そういうの」
あいまさま(声)「…いろんな人が、おるもんね」
早和くん「ちーがーうって!! ほんとに!! 付き合ってるの!! 俺はこの、ほわぷりのちぇりこちゃんと!!」
祐嗣「声でか」
あいまさま(声)「向こうのメリットなくなーい?」
早和くん「そういうことじゃない!! 俺とあの子はそういうのじゃない!!(泣)」
──ビシイッ!
涙をこすった早和くんが勢いよく隣の祐嗣を指さす。
早和くん「ならそっちはどうなんだよ!! あんたシスコンだろ!! とっくの昔に気づいてんぞ!!」
祐嗣「シスコンの何が悪いんだよ。文句あんのか」
早和くん「…い、いやそう言われたら、文句は、ないんですけど。でもなんか倫理的に! ダメでしょ!」
祐嗣「そうだよ。倫理的にアウトだよ。ガンガン血縁だからな」
早和くん「…あ、義理とかじゃないんすね。ガチ妹…?」
祐嗣「だから…だから、俺は……ッ」
早和くん「…えっ」
祐嗣「…ぐ、うう…ッ…ふう…」
あいまさま(声)「あーあ。泣かせたー」
早和くん「…すみません、なんか、そんなマジのやつだと…思ってなくて…!」
祐嗣「…ごめん…ごめん……。俺なんかが…おまえのお兄ちゃんで…ッ」
早和くん「…やばい。スゲーちっちゃい声で謝ってる……」
あいまさま(声)「まぁ、でもしょーじき? 実の妹に興奮する兄とか、ありえへんもんね(笑)(笑)」
祐嗣「…グハッッ(吐血) おええ…ッッ」
早和くん「追い打ちを! 追い打ちをかけてる! やめてあげてください!!」
祐嗣「…うう、ぐう…ッ」
早和くん「もう泣かないでくださいよ…大人のガチ泣きって怖いから…」
祐嗣「……じゃあ食われてくれ」
早和くん「それとこれとは話が別でしょ」
祐嗣「……」
スッ、と祐嗣は立ち上がって顔をあげる。
祐嗣「喧嘩で決めるか? 来いよ」
早和くん「勝てるわけない!!」
あいまさま(声)「やーんケンカとか怖いからやめて~~(>_<)」

──いろいろやった。
じゃんけん、相撲、あっちむいてホイとか。いわゆる七盤勝負までした。
でも結局、勝敗は五分五分だし、天の声のジャッジは曖昧でなにも決まらない。
お腹は空いていないとはいえど、酸素の薄いこの暗闇にいるだけで、ふたりの精神は極限状態に追い込まれていた。
どちらかがここから脱出できるが、どちらかが「彼」にくわれる。
そんな、絶体絶命な現状──。
あいまさま(声)「う~ん。なかなか決まれへんな~~」
早和くん「(あんたのせいだろ…!)」
祐嗣「…わかった…。もうあれだ。ビーチフラッグで決めよう」
早和くん「…ここは海じゃないっすよ」
祐嗣「…いいから立て」
早和くん「ええ~…」
祐嗣「はは…。お前、自信ないんだろ」
早和くん「(…自信っていうか。だってどう考えてもこっちのが有利じゃん…。袴?着てるし。走れないでしょ…)」
あいまさま(声)「じゃあその、びーちふらっぐ?で決めよか~」
祐嗣「…これで勝ったら、出してくれるんですよね」
あいまさま(声)「もちろん。僕もちょい飽きてきたしな~~。どっちでも味は変わらんやろし、はよ決めちゃって~」
祐嗣「……」
よろめきながら立ち上がり、祐嗣は早和くんが持ってきていた懐中電灯を20メートルほど先に置いた。
もう電池が切れかかっているのか、遠くで灯りが点滅しているように見える。
祐嗣「ルール、わかるな…」
早和くん「先に取ったほうが、でしょ…」
祐嗣「オッケー…」
──もう体力が残っていない。頭が働いていない。
ゆえに一刻も早く勝敗をつけたい。
そう、今ここで…。
早和くん「…恨みっこなしですからね」
祐嗣「…わかってる」
──スッ
ふたりは並んでクラウンチングスタートの姿勢をとる。
祐嗣「地面やばいからこっちでいこう」
早和くん「そうっすね」
あいまさま(声)「………」
あいまさま(声)「えー。ではでは、いざ尋常に~」
祐嗣「……」
早和くん「……」
あいまさま(声)「よーい…」
あいまさま(声)「──どん!」
あいまさま(声)の掛け声が響く。
それと同時にふたりは走り出したわけだが、早和くんが一歩踏み出した時、すでに隣に祐嗣の姿はなかった。
──マジ?
すぐに視線を前に向ける。
早和くん「──ちょッ、え、速ッ!!」
祐嗣「ははは!! 大学ん時サークルでずっとやってたんだよこれ!! 甲斐あったーッ」
早和くん「大学!? サークル!? ぎゃああああッッ」
祐嗣「じゃあなドルオタ!!」
──ガシッ
(祐嗣の足に巻き付く早和くん)
祐嗣「は!? ちょッ、バカ離せ!!」
早和くん「イヤだーーーッ俺も連れてって!! お願いしますお兄様!!」
祐嗣「俺はお前のお兄様じゃないッ」
早和くん「ヤダヤダヤダヤダ!! 死にたくないよーッッ」
あいまさま(声)「(…なんか食欲なくなってきた)」
──シュバッ
祐嗣「──あッ、よし! よっしゃ取った!!」
早和くん「あーーーッッ!!(泣)」
なんとか妨害をすり抜け、スライディングでゲットした懐中電灯を掲げる祐嗣。
だけど、手に持った感覚に少し違和感があった。
祐嗣「…あれ」
早和くん「…そ、それって…」
祐嗣「……」
早和くん「長いグミ…?」

↑
これ
早和くん「もらったーーッ!!」
祐嗣「あッ!」
その隙を見て、早和くんが祐嗣の近くに転がっていた懐中電灯を掠めとる。
暗闇の中なので何も見えないが、多分これは紛れもない懐中電灯の感触──!
早和くん「やった! これ、取りましたよ本物!!」
あいまさま(声)「おめでと~ん」
祐嗣「…な、なんでこんなとこに…グミが…ッ」
あいまさま(声)「ごめん。こっちの事情や」
早和くん「てことは、これ俺の勝ち…!? やったー!! 大・逆・転勝利ー!!」
祐嗣「……」
早和くん「…あ、なんかすみません。勝っちゃいました」
祐嗣「…別にいいよ。よくよく考えたらお前の方が戻るべきだろ。俺もう、死んでるし」
早和くん「…え?」
祐嗣「戻っても、いつもの地獄だ」
祐嗣「…久しぶりに誰かと話せて楽しかった。あっちでもこんぐらい素直に生きれてたら、もっとうまくできてたんだろうけど」
早和くん「…それって…どういう──」
あいまさま(声)「あ!」
ふたり「「!?」」
あいまさま(声)「え、まってまって。うそやん。きみ、人間ちゃうの?」
早和くん「…??」
あいまさま(声)「いや、僕の専門って生きてる魂やから、もう終わってるもんにキョーミないんよねえ。腐ってるもんなんか食べられへんもん~」
「と、いうことで」
と、頭上から声が響くと、その一瞬声もあげる間もなく、祐嗣の姿は消えていた。
早和くん「…???」
あいまさま(声)「こっからやとよう見えへんかったけど、確かに変な匂いはしてたしなあ。てか、後ろに変なんついとったし。女の子? 妹さんかな。ようわからんけど」
早和くん「…????」
あいまさま(声)「君も帰ってええよ。もうなんかお腹すいてへんから…興ざめや」
早和くん「え、え、ど、どういう…」
あいまさま(声)「食べる前にうじゃうじゃ動いてるやつあるよなあ。サカナとか魚介類の。僕あれ嫌いやねん。そういうこと」
あいまさま(声)「君は勝手に僕の家の敷居またいで、さっきの子はたまたまこっちに迷っちゃったって感じやねー。そんなんほんま滅多にないけど。あの子、半端もんやろ? 死んでるゆうてたけど、いわば亡霊のなりそこないや。基本ここは僕の「お気に入りの人間」しか入られへんから」
あいまさま(声)「ま、こんなん聞いても意味ないんよ。だってこっから出たら、今あったことぜーんぶ忘れてまうもん。でもそこそこおもろいもん見せてもらったし、最後に僕の名前だけ教えといたる♡」
あいまさま(声)「僕の名前は「■■さま」。じゃあね、10円ガムAくん」
──視界がぐらぐらする。
キーンと耳鳴りがして、自然とまぶたがキュッと閉じた。
あいまさま(声)「もうこんなとこ、来たらあかんよ」

「──ハッ!」
勢いよく目を見開いて、上半身を起こす。
その反動か、ずっと眠っていた影響なのか、すぐにめまいが襲ってきた。
──ここは、見知らぬ山の中。
自分の名前、年齢、職業…そういうものは覚えている。
ただ、なぜ自分がこんなところにいるのかだけが思い出せない。
今さっき、何かが起こった。
たぶん、誰かに話しても信じてもらえないような、常識はずれの不可思議な事象が──。
──ブブブブ
ポケットに入れていたスマホが震える。
頭に枯れ葉を乗せた彼は、頬についた煤をぬぐいながら電話に出た。
「…あ。よかった。繋がった」
「……あ、あれ。ちぇりこ…?」
「どうしたの? ずっと電話できなかったから心配してたんだけど…。あれ、もしかして本当にあそこの山、行っちゃった?」
「…山?」
「ちょっと前に早和くんが話してくれたんだよ。一度入ったら出られない、謎の怪異に襲われるっていう山。そんな変なところないよー。って言ったら「確かめてくる」って急にメッセージ途切れて…。死んだのかと思った」
「…え、ま、ずっと、心配してくれてたの…!? 俺のこと…!!」
「うん。仕事おわってすぐかけたよ!」
「(…すぐ…?)」
「それで、その都市伝説? ──「あいまさま」には会えたの?」
──あれ。ああ、なんか、それ。
俺、会えたんだっけ。どうだっけ。
全然おぼえてない。
でも、なんかすごいバカにされた記憶だけはある。なんでだ?
あ、そうだ!
「──ちぇりこさん!!」
「なに? 警察呼ぶ?」
「いやひとりで帰れるから…。じゃなくて!」
訊かないと。絶対。
これだけは、訊いておかなければ。
「…お、俺たちって、その…。つ、つつ付き合ってるんだよね…?」
「……」
「……」
「うん。付き合ってるよ~♡(ファンサ)」
「ヨカッターーーッッ!!」
~完~

