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​年末クロスオーバーSS

全作品、本編後ベース。
早和くんとおにーちゃんがあいまさまの中?に迷いこんでしまう話

​あらすじ

突如として見知らぬ空間へ迷い込んでしまった「早和くん」「祐嗣」

無限ループのように同じ道を歩き続けていた。

そんな中「あいまさま」と名乗る謎の声が頭上から聞こえてきて——!?

​果たして二人はこの場所から脱出することができるのか!?

icon_早和くん (1).png

​​26歳。ヒロインのストーカー

「早和(さわ)くん、元野球部なのにストーカーなんて変だよ。しかも童貞だし…」より

​​20代後半? ヒロインの異父兄

「【おにーちゃんは、じごくいき‼】※※異父兄妹×死後婚※※」より

​​年齢不詳。ヒロインの家に巣くう怪異

「「あいまさま。」~家族のためにどろあま狂愛えっち♡を耐え抜きましょう~」より

※一応クロスオーバーになるのでご注意ください
※かなりギャグなので苦手な方はブラウザバック推奨です(内容的に全然重要じゃないので読まなくても別に大丈夫です)
※ヒロインは各々独立してる設定です
(早和くんのヒロインのみ登場、セリフあり)

──ふたりが目を開くとそこは、謎の空間だった。
夜の底が黒くなった。見知らぬ”誰か”との邂逅に足が止まった。


 

早和くん「……」

祐嗣「……」

 

──スタスタスタ

 

早和くん「…?」

祐嗣「……」

早和くん「……」

 

──スタスタスタ

 

早和くん「……」

祐嗣「…あの」

早和くん「あ、ハイ」

祐嗣「もしかして、迷ってます?」

早和くん「…あ、そう、なんですよね。ずっとここ、歩いてて…」

祐嗣「俺たち、ずっと会ってますよね?」

早和くん「…はい。たぶん…10回くらい」

祐嗣「…体感なんですけど、もう5時間ぐらいはここにいる気がするんですが」

早和くん「……」

祐嗣「……」

 

──スタスタスタ!!

 

早和くん「──でで、ですよね!? や、やばくないすか!?」

祐嗣「ヤバイよなんだよここ!! 全然出れないよな!?」

早和くん「そそそそうなんですよ! すみません…。俺、なんか変な恰好だなって、幽霊かなって思っちゃって…! ずっと声かけれなくて…」

祐嗣「いや、まあ、幽霊ではある」

早和くん「…え?」

祐嗣「…え?」

 

祐嗣「…とりあえず、地図書くか」

早和くん「ハ、ハイ…」

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(その場に座るふたり)

 

祐嗣「…もっとこっち、ランプ寄せてくれ」

早和くん「…こうすか?」

祐嗣「ん」

早和くん「…そういえば、これ(ランプ)って元々ありました?」

祐嗣「なんとか歩いて見つけた。周りになにもなかったしな」

早和くん「俺は元々、懐中電灯持ってきてたんで…あれだったんですけど」

祐嗣「……」

早和くん「ここ…どこなんでしょうね」

祐嗣「心当たりは」

早和くん「…いや、一応。ちょっと肝試しっていうか、度胸試し、的な…。いわくつきの山に入って、気づいたら「ここ」にいた感じで」

祐嗣「…なるほどね」


 

「完成」と、祐嗣が地面?に地図を書き終える。


 

早和くん「おお、書けるんすね」

祐嗣「地面自体は膜が張ってる感じだ。皮膚をガリガリ傷つけてるイメージ」

早和くん「…えー。なんかそれ、あれじゃないすか? 巨人の体内にいる、みたいな…」

祐嗣「…ここが?」

早和くん「…現実だったら、ありえないですけど」

祐嗣「…現実じゃないかもしれない。もしかしたら夢かもな」

早和くん「はは。それだったらいいですけどねー…」

祐嗣「…じゃあ振り返る。まず、各々目を覚ました場所は違う。で、ずっと真っ直ぐ歩いてきた」

早和くん「あってます」

祐嗣「持ち物はランプ(懐中電灯)のみ。辺りは真っ暗。地面はちょっとぬるぬるしてて粘膜っぽい」

早和くん「…はい」

祐嗣「…そして、ずっと繰り返し同じルートを辿ってる」

早和くん「…無限ってことだ。無限城すね」

祐嗣「…なに?」

早和くん「キメツの映画ですよ。見ました?」

祐嗣「…見てねー」

早和くん「見た方がいいっすよ! スゲーおススメです!」

祐嗣「…お前、腹は?」

早和くん「腹? ああ…全然減ってないです。喉も…うん」

祐嗣「…じゃあマジで無限ループだな。出られるまで」

早和くん「ええ…。うそーーん…」

祐嗣「あ、スマホは? 持ってんだろ」

早和くん「…あ、あるにはあるんですけど…。その、圏外で」

祐嗣「ダメか…」

早和くん「…もし夢だったら、もうじき覚めますかね?」

祐嗣「…ためしに一回、寝てみるか」

早和くん「…っすね」

 

(とりあえず横になってみるふたり)

 

祐嗣「うわ…背中の感触ヤバイな」

早和くん「…がんばりましょ」

祐嗣「……」

早和くん「……」

 

──目を閉じる。
辺りは静かで、物置ひとつしない。それが逆に、彼らの神経を研ぎ澄ます。

…寝られない。

 

祐嗣「…これ、部活思い出すわ。合宿の時の」

早和くん「…あー。夜、雑魚寝しますよね」

祐嗣「寝相といびきヤバイやついてな」

早和くん「布団もどっかいくし(笑)」

祐嗣「…なんだかんだ、あれも思い出だよな」

早和くん「マジすか(笑) 俺はもうしたくないすけど(笑)」

祐嗣「…俺は、したいな」

早和くん「……」

祐嗣「…もうできないし」

早和くん「(…なんか、この人。いや…)」

 

早和くん「…あ! 戻ったらなにします? 俺はライブかなー。明日あるんすよ。だから一刻も早く帰りたいです」

祐嗣「…ライブ…?」

早和くん「好きなアイドルいて~めっちゃかわいいんです! 写真! あ、今ムリだった…」

祐嗣「…お前」

早和くん「はい?」

祐嗣「…別に俺、死なないからな。寝るだけだからな」

早和くん「…いや、だってなんか、顔色めちゃ悪いし」

祐嗣「……」

早和くん「……」

祐嗣「……俺は、妹がいるから。すぐに戻らないと」

早和くん「へー…。いいっすね。俺は兄貴なんで、妹とかうらやましーなー」

祐嗣「…なに言ってんだお前。かわいいだけだぞ」

早和くん「いやめっちゃいいじゃないすか」

祐嗣「……」

早和くん「一緒に住んでるんすか?」

祐嗣「…まぁ、うん」

早和くん「いーなー…」

祐嗣「…ねずこってさ」

早和くん「…え?」

祐嗣「最後、人間に戻れたんだっけ」

早和くん「……」

祐嗣「……」

早和くん「…それは」

祐嗣「……」

早和くん「……」

祐嗣「…ZZZZ」

早和くん「──寝ちゃった!? はやッ」

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~~数時間後~~

 

──むくり。

 

祐嗣「……」

早和くん「……」

祐嗣「…おはよう」

早和くん「…はようございます」

祐嗣「…なーんも変わってねえよ。ずっと同じだよ。真っ暗闇だよ」

早和くん「…マジで出れないんすかね。ヤバイ、泣きそう」

祐嗣「俺はともかく、お前はヤバイよな…」

早和くん「どうしよどうしよどうしよ…!! 俺死んじゃうんすか!?」

祐嗣「…多分」

早和くん「イヤだーーッッ!! 死にたくないよー!!」

祐嗣「落ち着けって!! まだそうと決まったわけじゃない」

早和くん「でも、え!? どうするんですか!? やっぱりこれ夢じゃないですよ!! 現実ですよ!!」

祐嗣「…いや、まだ、なにか」

 

──祐嗣は考える。

こんなの絶対におかしい。自分はまだわからなくもないが、”普通の人間”がこんな場所にいるのは妙だ。
だから抜け出す手段はまだある。

これがもしも、”ゲーム”なら…。

 

祐嗣「…なにか、条件があるはず」

早和くん「…ええ?」

祐嗣「…どんな場面でも、クリアするには何かしら条件があるだろ。ここだってマジに無限ループじゃないはずだ」

早和くん「…出られる条件…! 出口発動条件!!」

祐嗣「そう、それだ!」

 

──コンッ

 

祐嗣「……」

早和くん「……」

祐嗣「…え、なに?」

早和くん「…いや、これしかないかなって」

祐嗣「…これしかないって。俺の頭に手刀が?」

早和くん「…はい」

祐嗣「……」

 

──ゴンッ

 

早和くん「…え、痛」

祐嗣「……」

早和くん「……」

 

──ゴンコンゴンコンッ

 

早和くん「ちょっとやめてくださいよ!! 頭が!! 割れる!!」

祐嗣「お前が先にやってきたんだろうが!! お前こそヤメロ!!」

早和くん「ここまできたらやめられない!! これが発動条件かもしれないからッ!!」

祐嗣「ンなわけねーだろ!!」

早和くん「うおおおおおおッッ」

「やめときやめとき。ほんまに頭割れるで~」

 

──ピタリ。

 

ふたり「「…え?」」

あいまさま(声)「こんにちは~。あいまさまで~す。声だけの出番で堪忍な~」

ふたり「「うわあああああああああ」」

 

早和くん「人!? 人の声!?」

祐嗣「どっから聞こえてんのこれ!?」

あいまさま(声)「え~(笑) 怖がりすぎちゃう?(笑) てゆーか、君らが僕の中に勝手に入ってきたんやん」

早和くん「…僕の、中?」

祐嗣「勝手に…?」

あいまさま(声)「そうやで。自覚なしい?」

早和くん「…じ、自覚っていうか」

祐嗣「…気づいたらここにいたから」

 

──どこからともなく聞こえてくる声。

その声の主は、戸惑う二人をあざ笑うようにケタケタと笑う。

 

あいまさま(声)「なるほどな~。そっかそっか~」

早和くん「…あ、あの」

あいまさま(声)「ん~? 質問?」

早和くん「…はい、質問です。俺たちって、ここから出られるんですか?」

あいまさま(声)「うん。でれるよー」

ふたり「「…!!」」

あいまさま(声)「あ、でも。いま僕、ちょうどお腹すいてたし…どっちか残ってもらおかな?

ふたり「「……え??」」

あいまさま(声)「ここはなあ、いうなれば食道。やから全然後戻りできるけど、勝手に入ってきた罰もかねて、ひとりだけいただきたいとおもいま~す♡」

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──お、終わった。

ふたりは青ざめた顔で空を見上げる。たぶん、そのあたりから声がするから。
一応、なんとなく。

 

早和くん「…た、たべるんですか」

あいまさま(声)「うん」

祐嗣「…な、なぜ」

あいまさま(声)「だって僕、そういうモンやから」

 

あいまさま(声)「君らもごはん、たべるやろ? それと同じ。まあ正直、腹の足しにもならんつまみ食いやけど」

あいまさま(声)「僕、メインディッシュはそばにおるんよ。けど、たまにはちょっと軽いもん食べたいやん。10円ぐらいのガムとか」

 

早和くん「…俺らって10円のガムなんですか?」

祐嗣「…ヤングドーナツは」

あいまさま(声)「それは言い過ぎやろ(笑)」

早和くん「…そんな」

あいまさま(声)「君らがさっき話してた、じょーけん?てやつがこれ。どっちかひとりが僕にたべられたら、もうひとりは元の世界に戻れる

ふたり「「………」」

あいまさま(声)「な? 簡単なハナシやろ?」

 

──その言葉に、ふたりは顔を見合わせる。

(…ゴクリ)

 

祐嗣「……」

早和くん「……」

祐嗣「…いけるか?」

早和くん「ムリですよ!! なんで俺なんですか!!」

祐嗣「だって俺には妹がいるし」

早和くん「そんな当たり前みたいに言われても…! 俺だって待ってくれてる家族とか、友だち…は、あれだけど、あの、彼女とかいるんですから!!」

あいまさま(声)「へー。君、カノジョおるんや。意外」

祐嗣「マジ…?」

早和くん「…どういうイメージ? ねえ俺ってどういう風にみられてるんですか?」

祐嗣「証拠みせろよ」

早和くん「…いやそんなこと言われても。って、あ…!」

 

「じゃじゃーん!」と早和くんはスマートフォンの裏を祐嗣とあいまさま(声)に見せつける。

 

早和くん「──彼女(のトレカ)です!!」

祐嗣「うお…」

あいまさま(声)「あー……(笑)」

早和くん「……いや、ちょ、あれ?」

祐嗣「…まぁ、あんま気にすんなよ。俺は全然、いいと思うし、そういうの」

あいまさま(声)「…いろんな人が、おるもんね」

早和くん「ちーがーうって!! ほんとに!! 付き合ってるの!! 俺はこの、ほわぷりのちぇりこちゃんと!!」

祐嗣「声でか」

あいまさま(声)「向こうのメリットなくなーい?」

早和くん「そういうことじゃない!! 俺とあの子はそういうのじゃない!!(泣)」

 

──ビシイッ!

涙をこすった早和くんが勢いよく隣の祐嗣を指さす。

 

早和くん「ならそっちはどうなんだよ!! あんたシスコンだろ!! とっくの昔に気づいてんぞ!!」

祐嗣「シスコンの何が悪いんだよ。文句あんのか」

早和くん「…い、いやそう言われたら、文句は、ないんですけど。でもなんか倫理的に! ダメでしょ!」

祐嗣「そうだよ。倫理的にアウトだよ。ガンガン血縁だからな」

早和くん「…あ、義理とかじゃないんすね。ガチ妹…?」

祐嗣「だから…だから、俺は……ッ」

早和くん「…えっ」

祐嗣「…ぐ、うう…ッ…ふう…」

あいまさま(声)「あーあ。泣かせたー」

早和くん「…すみません、なんか、そんなマジのやつだと…思ってなくて…!」

祐嗣「…ごめん…ごめん……。俺なんかが…おまえのお兄ちゃんで…ッ」

早和くん「…やばい。スゲーちっちゃい声で謝ってる……」

あいまさま(声)「まぁ、でもしょーじき? 実の妹に興奮する兄とか、ありえへんもんね(笑)(笑)

祐嗣…グハッッ(吐血) おええ…ッッ

早和くん「追い打ちを! 追い打ちをかけてる! やめてあげてください!!」

祐嗣「…うう、ぐう…ッ」

早和くん「もう泣かないでくださいよ…大人のガチ泣きって怖いから…」

祐嗣「……じゃあ食われてくれ」

早和くん「それとこれとは話が別でしょ」

祐嗣「……」

 

スッ、と祐嗣は立ち上がって顔をあげる。

 

祐嗣「喧嘩で決めるか? 来いよ」

早和くん「勝てるわけない!!」

あいまさま(声)「やーんケンカとか怖いからやめて~~(>_<)」

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──いろいろやった。
じゃんけん、相撲、あっちむいてホイとか。いわゆる七盤勝負までした。
でも結局、勝敗は五分五分だし、天の声のジャッジは曖昧でなにも決まらない。

お腹は空いていないとはいえど、酸素の薄いこの暗闇にいるだけで、ふたりの精神は極限状態に追い込まれていた。

どちらかがここから脱出できるが、どちらかが「彼」にくわれる。
そんな、絶体絶命な現状──。

 

あいまさま(声)「う~ん。なかなか決まれへんな~~」

早和くん「(あんたのせいだろ…!)」

祐嗣「…わかった…。もうあれだ。ビーチフラッグで決めよう」

早和くん「…ここは海じゃないっすよ」

祐嗣「…いいから立て」

早和くん「ええ~…」

祐嗣「はは…。お前、自信ないんだろ」

早和くん「(…自信っていうか。だってどう考えてもこっちのが有利じゃん…。袴?着てるし。走れないでしょ…)」

 

あいまさま(声)「じゃあその、びーちふらっぐ?で決めよか~」

祐嗣「…これで勝ったら、出してくれるんですよね」

あいまさま(声)「もちろん。僕もちょい飽きてきたしな~~。どっちでも味は変わらんやろし、はよ決めちゃって~」

祐嗣「……」

 

よろめきながら立ち上がり、祐嗣は早和くんが持ってきていた懐中電灯を20メートルほど先に置いた。
もう電池が切れかかっているのか、遠くで灯りが点滅しているように見える。

 

祐嗣「ルール、わかるな…」

早和くん「先に取ったほうが、でしょ…」

祐嗣「オッケー…」

 

──もう体力が残っていない。頭が働いていない。
ゆえに一刻も早く勝敗をつけたい。

そう、今ここで…。

 

早和くん「…恨みっこなしですからね」

祐嗣「…わかってる」

 

──スッ

ふたりは並んでクラウンチングスタートの姿勢をとる。

 

祐嗣「地面やばいからこっちでいこう」

早和くん「そうっすね」

あいまさま(声)「………」

 

あいまさま(声)「えー。ではでは、いざ尋常に~」

祐嗣「……」

早和くん「……」

あいまさま(声)「よーい…」

 

あいまさま(声)「──どん!」


 

あいまさま(声)の掛け声が響く。
それと同時にふたりは走り出したわけだが、早和くんが一歩踏み出した時、すでに隣に祐嗣の姿はなかった。

──マジ?
すぐに視線を前に向ける。


 

早和くん「──ちょッ、え、速ッ!!」

祐嗣「ははは!! 大学ん時サークルでずっとやってたんだよこれ!! 甲斐あったーッ」

早和くん「大学!? サークル!? ぎゃああああッッ」

祐嗣「じゃあなドルオタ!!」

 

──ガシッ
(祐嗣の足に巻き付く早和くん)

 

祐嗣「は!? ちょッ、バカ離せ!!」

早和くん「イヤだーーーッ俺も連れてって!! お願いしますお兄様!!」

祐嗣「俺はお前のお兄様じゃないッ」

早和くん「ヤダヤダヤダヤダ!! 死にたくないよーッッ」

あいまさま(声)「(…なんか食欲なくなってきた)」

 

──シュバッ

 

祐嗣「──あッ、よし! よっしゃ取った!!」

早和くん「あーーーッッ!!(泣)」

 

なんとか妨害をすり抜け、スライディングでゲットした懐中電灯を掲げる祐嗣。
だけど、手に持った感覚に少し違和感があった。

 

祐嗣「…あれ」

早和くん「…そ、それって…」

祐嗣「……」

早和くん「長いグミ…?」

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​これ

​早和くん「もらったーーッ!!」

祐嗣「あッ!」

 

その隙を見て、早和くんが祐嗣の近くに転がっていた懐中電灯を掠めとる。
暗闇の中なので何も見えないが、多分これは紛れもない懐中電灯の感触──!

 

早和くん「やった! これ、取りましたよ本物!!」

あいまさま(声)「おめでと~ん」

祐嗣「…な、なんでこんなとこに…グミが…ッ」

あいまさま(声)「ごめん。こっちの事情や」

早和くん「てことは、これ俺の勝ち…!? やったー!! 大・逆・転勝利ー!!」

 

祐嗣「……」

早和くん「…あ、なんかすみません。勝っちゃいました」

祐嗣「…別にいいよ。よくよく考えたらお前の方が戻るべきだろ。俺もう、死んでるし」

早和くん「…え?」

 

祐嗣「戻っても、いつもの地獄だ」

祐嗣「…久しぶりに誰かと話せて楽しかった。あっちでもこんぐらい素直に生きれてたら、もっとうまくできてたんだろうけど」

早和くん「…それって…どういう──」

 

あいまさま(声)「あ!」

ふたり「「!?」」

あいまさま(声)「え、まってまって。うそやん。きみ、人間ちゃうの?」

早和くん「…??」

あいまさま(声「いや、僕の専門って生きてる魂やから、もう終わってるもんにキョーミないんよねえ。腐ってるもんなんか食べられへんもん~」

 

「と、いうことで」
と、頭上から声が響くと、その一瞬声もあげる間もなく、祐嗣の姿は消えていた。

 

早和くん「…???」

あいまさま(声)「こっからやとよう見えへんかったけど、確かに変な匂いはしてたしなあ。てか、後ろに変なんついとったし。女の子? 妹さんかな。ようわからんけど」

早和くん「…????」

あいまさま(声)「君も帰ってええよ。もうなんかお腹すいてへんから…興ざめや」

早和くん「え、え、ど、どういう…」

 

あいまさま(声)「食べる前にうじゃうじゃ動いてるやつあるよなあ。サカナとか魚介類の。僕あれ嫌いやねん。そういうこと」

あいまさま(声)「君は勝手に僕の家の敷居またいで、さっきの子はたまたまこっちに迷っちゃったって感じやねー。そんなんほんま滅多にないけど。あの子、半端もんやろ? 死んでるゆうてたけど、いわば亡霊のなりそこないや。基本ここは僕の「お気に入りの人間」しか入られへんから」

あいまさま(声)「ま、こんなん聞いても意味ないんよ。だってこっから出たら、今あったことぜーんぶ忘れてまうもん。でもそこそこおもろいもん見せてもらったし、最後に僕の名前だけ教えといたる♡」

あいまさま(声)「僕の名前は「■■さま」。じゃあね、10円ガムAくん」

 

──視界がぐらぐらする。

キーンと耳鳴りがして、自然とまぶたがキュッと閉じた。

 

あいまさま(声)「もうこんなとこ、来たらあかんよ」

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「──ハッ!」

 

勢いよく目を見開いて、上半身を起こす。
その反動か、ずっと眠っていた影響なのか、すぐにめまいが襲ってきた。

──ここは、見知らぬ山の中。
自分の名前、年齢、職業…そういうものは覚えている。
ただ、なぜ自分がこんなところにいるのかだけが思い出せない。

今さっき、何かが起こった。
たぶん、誰かに話しても信じてもらえないような、常識はずれの不可思議な事象が──。

──ブブブブ

ポケットに入れていたスマホが震える。
頭に枯れ葉を乗せた彼は、頬についた煤をぬぐいながら電話に出た。

 

「…あ。よかった。繋がった」

「……あ、あれ。ちぇりこ…?」

「どうしたの? ずっと電話できなかったから心配してたんだけど…。あれ、もしかして本当にあそこの山、行っちゃった?」

「…山?」

「ちょっと前に早和くんが話してくれたんだよ。一度入ったら出られない、謎の怪異に襲われるっていう山。そんな変なところないよー。って言ったら「確かめてくる」って急にメッセージ途切れて…。死んだのかと思った」

「…え、ま、ずっと、心配してくれてたの…!? 俺のこと…!!」

「うん。仕事おわってすぐかけたよ!」

「(…すぐ…?)」

「それで、その都市伝説? ──「あいまさま」には会えたの?」

 

──あれ。ああ、なんか、それ。

俺、会えたんだっけ。どうだっけ。
全然おぼえてない。


でも、なんかすごいバカにされた記憶だけはある。なんでだ?

あ、そうだ!

 

「──ちぇりこさん!!」

「なに? 警察呼ぶ?」

「いやひとりで帰れるから…。じゃなくて!」

 

訊かないと。絶対。
これだけは、訊いておかなければ。

 

「…お、俺たちって、その…。つ、つつ付き合ってるんだよね…?」

「……」

「……」

 

「うん。付き合ってるよ~♡(ファンサ)」

「ヨカッターーーッッ!!」

~完~

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